第六章 作者の戦法遍歴
【我流戦法の絶大な魅力】 自分で考案した戦法で対局することの魅力について少々・・・面白さが違うのである。 当然に欠陥があるし(あるはず)、そのことによる不安は常に付きまとう。 しかし、敷かれたレールを進むこととは、また違った感覚が確かに存在する。 我が道を突き進むこと。それは未知であり冒険である。そして、自分だけのものを育てる楽しさがある。 将棋を職業とする者にとっては先人の遺産から学ぶことは必須だ。なんといっても効率が良い。 なにより「勝つ」ことが至上であるので、それは当然である。 しかし、趣味とする者にとっては「楽しさ」がそれに勝る。 人真似ばかりしていては、つまらない。例えそれがプロのものであってもだ。 (これは作者個人の考えであり、当然ながら本格志向(プロ将棋)の中に「楽しさ」を見出す方(多数)もいて然りで、どこに「楽しさ」を感じるかは人それぞれであろう。) |
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【新戦法の模索】 対三間、対四間飛車戦において愛用(常用)してきた我流戦法「きりSP」も有段者や上級者相手だと「当然ながら」超急戦の成功率は極めて低くなり、すっきり勝てるものではない。(まったく勝てないわけではないが、勝ち方が非常にニガイのである。) 昇段できない原因は「きりSP」を採用していることにあるのでは?との疑念が日増しに膨らみ、抑え切れず、自ずとそれに替わる戦法の模索がはじまった(T_T) |
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(第1図) |
【毒舌御免】 ときどき他者の観戦をすると・・・猫も杓子も第1図のような「対抗形」だ。 整備が相当進んでいて広く普及している対抗形(急戦、持久戦とも)の定跡を今さら一から勉強する気には到底なれない。 また、そのような将棋ではオリジナルを出せる場面がないのではないか?と思う。ひと(プロ等)の将棋をそのまんま再現しているに過ぎず、つまらない。学校の勉強ではあるまいし、暗記の披露合戦なんぞしたくない、そんな気持ちだ。・・・あらあらm(_ _)m 創意工夫の余地がまだたっぷりありそうな、それでいてプロによる採用例があり、ある程度本格的(?)な戦法を選びたかった。・・・このように書くと「そんな戦法あるのかよ!」「真摯に強くなる気があるのか?」とツッコまれそうですが(^^; |
(第2図) |
【作者の将棋】 作者は十級から二級までの間、居玉に近い形から先攻しそのまま攻め潰すか、はたまたカウンターKOを食らうかで決着する、まるでジャンケンのようなシンプル(低レベル)な将棋がほとんどであり、相居飛車戦での矢倉や対振り飛車戦での舟囲いなど、まともに囲うことがほとんどなかった。 そもそも初形(第2図参照)で、すでに玉の左右に金が配置されておりそれだけでそこそこ好形だと思っていたし、「手数」の多くを守備に費やさずとも早い段階でそれを攻めに使うことで、十分戦えると思い続けていた。勿論、棋書は持っていたし「玉はまず囲うもの」(駒組み)ということは知識として持ってはいたが信じていなかった。・・・う〜ん、なんてこった。 |
【穴熊は本当に堅いのか?】 対居飛車戦、対振り飛車戦ともに急戦オンリー(急戦棒銀、急戦矢倉、きりSP)だった作者だが、ここは思い切って方向転換、気分一新し、持久戦をやってみたい気持ちがどこかにあった。 そして、ややともすると偏見視されがちな「穴熊」を指してみたかった。 「穴熊は堅い」とよく言われるが、膨大な手数をかけてまで組み上げる価値が本当にあるのか?と常に疑問に感じていたし、また自分の将棋において「相手からなかなか攻めてこない」対穴熊戦の勝率は非常に高くカモに近いと思っていた囲いだが、実はプロの実戦では採用率がかなり高いことを知り、自分自信で実践検証してみたかったからだ。 また、急戦を仕掛けるものの徹底的に受けられてしまい攻めが頓挫し、徐々に形勢悪化するような将棋に辟易しており、まったくの未知の世界に踏み込みたいといった気持ちがあったことも動機のひとつだ。 |
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(第3図) |
【飛車先不突穴熊】 振り飛車からの急戦(藤井システムの類)だけは食らいたくはない。穴熊に囲っている最中に攻められてそのまま負ける・・・非常にわびしい。そんな将棋は御免だ!そこで生まれたのが「飛車先不突穴熊」だ。(第3図) とにかく振り飛車からの超急戦すら間に合わない程のスピードで囲おうとするものだ。飛車先を突かず右銀の繰り出しも省略しているので、幾分早く囲いが完成する。それが大きいとみている。 早速実戦で使い続けてみたところ・・・勝てない。まったく。たしかに、早々から玉周辺に火の手が上がることはなさそう。とりあえず穴には潜れるようだ。しかし、右辺を受けていないのでそこが持ちこたえられない。 変化はいろいとあるだろうが、とにかく勝てないというのが実感で、プロの実戦例がないのも納得である。そもそもこの将棋は少々恥ずかしい。攻める姿勢をまったく見せずただひたすら囲う・・・卑屈な感じで。作者にとって実に短命な戦法であった(^^; |
(第4図) |
【ポピュラーな居飛穴】 きりSPを採用していた当時は、どんな局面でも「自分の庭」で指せていた(実はこの利が大きかった)。 逆にポピュラーな対抗形を指さなかった作者にとって、第4図のような居飛穴に組むことは「相手の土俵」で戦っているに等しい。このような戦形は明らかに振り飛車側に一日の長(千日の長?)がある。 数局指してみたところ、見たこともないような好手(恐らく手筋、定跡手)の連打を食らい、負けまくりである。まったく勝てる気がしない。いつもの相手が相当な格上に感じられてしまうのだ。穴熊に組むこと自体難しく、また囲いを完成させることはできたとしても勝てない。 きりSPを使わなくなってからの対振り飛車戦はほぼ全敗で、あっという間にR400点近く降下した。(さすがにR400も落ちている状態だと対居飛車戦は逆に全勝に近くそれ以上は落ちなかった。) このような形からでは、きっと自己流は通じない。相当量の定跡を勉強しなければ太刀打ちできないように思う。作者にとって今更そんな面倒なことはできない。よって十数局指したところで嫌になって断念した(笑) |
(第5図) |
【ドリーム戦法「右四穴」との出会い】 何かないかと、ある日本屋をさまよっていると・・・三浦プロが著す「三浦流右四間の極意」なるものを発見。 そこには、な、なんと!駄目だと思っていた「飛車先不突穴熊」がずばり紹介されているではないか! それによると、飛車先不突+右四間+居飛穴=必勝(第5図参照) つまり、「ドリーム戦法」なのだという。 熟考してからでないと物を買わない作者だがこのときばかりは速攻で購入。自分に必要な「不突右四穴」の頁だけを徹底的に精読した。 右四間飛車戦法は、プロ対局での出現率は低いものの実戦例は確かに存在し、奇襲戦法とは言えない。意外に古くから指されているらしく、棋書によるとそれなりに歴史ある戦法とのこと。右桂を最大限活用する右四間飛車の急戦も面白そうではあるが、攻めがやや単調で受け側の定跡もかなり確立化されているようだ。 ここは、やはりドリーム戦法「右四穴」しかあるまい。! そんなこんなで対振り飛車戦での主力戦法を「きりスペシャル」から「右四穴」に移行したのであった。 |
(最後に一言) 最後まで読んでいただきありがとうございました。作者の昇段できない原因が、「根本的な自分の棋力によるものなのか?」あるいは「我流戦法を使っていることによるものなのか?」、とにもかくにもそれを究明したかった作者としては、あっさり戦法変更してしまいました。 定跡を無視した我流戦法でありながらもそこそこ昇級し続けてこれた作者にとって本当にわからなかったのです。(といいながらも薄々気づいていたから戦法変更するに至ったとも言えるのですが。) そして現在、すでにその結論は出ております。・・・両方どす。後者寄りですが(^^; 「右四穴」の棋書は意外と少なく、紹介されている棋譜(定跡)も基本的変化のごく一部に過ぎず網羅性は低いです。(結局のところどんな戦法でもそうなのかも知れませんが) しかし、そこが気に入るところで、あとの変化は自分で工夫し創造する余地があります。また振り飛車側の有力な対策もあり、局面により「右四穴」にせず「きりSP」を発動させたほうがよいと思えるときもあり、使い分けをすることもあります。面白い変化もあり、それらについても時間があれば紹介できればいいなと思っております。 では、ごきげんよ〜♪また会う日まで〜♪ |